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第19話 初めてのキスは夏の光の中で

Author: 東雲明
last update publish date: 2026-09-09 17:49:08
「テオ!待ってくれ!」

 白い連絡通路の先で、旅行鞄を引いたテオの背中が遠ざかっていく。

 俺は息が切れるほど走っているのに、足元の床だけが際限なく伸び続け、距離は少しも縮まらない。左右に並ぶ透明な教室には誰もおらず、扉の上へ赤い文字が浮かんでいた。

 四寮合同中間考査、不合格。

 その文字が灯るたび、校舎の照明が一列ずつ消えていく。獅子寮の紋章も、医療棟へ続く渡り廊下も、暗闇の中へ静かに沈んでいった。

「待てよ! 追試だってあるだろ。勉強なら何度でも付き合うから!」

 何度呼びかけても、テオは立ち止まらない。

 あいつがいなくなれば、朝の食堂でパンを奪い合う声も、訓練で疲れ果てた俺を笑わせる斜め上の作戦も聞こえなくなる。三人で囲んだ談話室のテーブルから、ひとつだけ椅子が消える。

 そんな光景を想像しただけで、胸の奥が冷たく縮んだ。

「テオ!」

 出口の直前で、ようやくテオが振り返った。

 いつもの人懐っこい笑顔を浮かべている。それなのに、肩から先は出口の白い光へ溶け始め、握っている鞄まで透けていた。

「短い間だったけど、世話になったな。まぁパンでも食って俺のこと思い出してくれよ」

「
東雲明

今回は、ゴールデントリオが無事に中間考査を合格し、ハヤトは学年首席を維持、エマはこれまでの実績が認められ、光の病の薬の学園公認研究者に、そしてテオは落第を免れます。夏休み、ハヤトはミナをデートに連れ出すことに成功。あと一歩で距離が縮まりますが、残念ながら花火の音にかき消され、ハヤトは告白の返事を聞きそびれてしまいます。今回もおもしろいと思われましたらブクマ、評価、レビューいただけると泣いて喜びます。

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